姿勢コントロールのメカニズムについてはこちら
「リーチ(上肢)」と「移動(歩行)」は、動的なバランスコントロールの維持という点で一致している。つまり、どちらも予測的な方法で不安要素に適応している。(Grasso,Zago et al 2000)
特に動作開始時(手を挙げる前 or 足を前に出す前)は同じ戦略にて行われている。
歩行のメカニズムについてはこちら
●リーチ動作の予測的姿勢制御●
リーチ動作(手を前方へあげる)時には、上肢の重さ分、重心がリーチ側前方へ偏位する。効率的に動くためには、動作に先行して姿勢をコントロールする必要があるため、リーチを行う前に重心を高く保ちながら、後方へ重心を移しておく必要がある。この姿勢コントロール時に働くのは、皮質橋網様体脊髄システムであり、リーチ動作も歩行も動作開始前にこのメカニズムによる動作の正しい方向付けが大切である。
●Over head reach●
手を高い位置まで拳上していく時には、①動作開始前②動作開始後(安定性限界内)③運動中(安定性限界の外)で働くメカニズムが異なる。(今回は主に座位でのメカニズムについて説明する。)
動作開始前は、抗重力伸展位を保ちながら後方へ重心を偏位する必要があり、この時には皮質橋網様体脊髄システムが働く。(Feedforward control)
上肢の拳上が始まり、両側坐骨が支持面に設置している間は運動肢のコントロールを行うための皮質延髄網様体脊髄システムが働く。(Feedforward control)
上肢をより高い位置まで拳上するために、骨盤の拳上側への傾斜が起こると重心の変化が起こる。その変化は背側脊髄小脳路を介して前庭核へ伝えられ、前庭脊髄システムが働き抗重力伸展活動を強める。(Feedback control)
以上、リーチ動作の神経メカニズムについてのまとめを行った。
歩行もリーチ動作も動作を行う前の姿勢コントロールメカニズムは、おおよそ同じメカニズムによって成り立っている。脳卒中片麻痺を呈している患者は、動作を行う前の姿勢コントロールがうまく行えていない者が多い。姿勢コントロールの概念を通して、PTもOTも共通の問題点に向かってアプローチが行えると麻痺やパフォーマンスの改善が効率的に進むと思われる。
書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法
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