2015年6月19日金曜日

覚醒と姿勢コントロール

当院は急性期の病院であり、覚醒・意識レベルの低下を認める症例を多く経験する。
よく新人や学生より「覚醒を上げるために坐位(立位)をとります!」という事を耳にするが、なぜ抗重力位をとると覚醒が上がるのか、理由が定かでない者も多い。

今回は抗重力位と覚醒との関わりについてまとめたいと思う。

●覚醒と脳幹網様体●
覚醒や情動などをコントロールしているのは上位脳である大脳皮質や辺縁系であるが、覚醒状態の維持には脳幹網様体の興奮が必要である。この脳幹網様体の興奮が視床を介して大脳全体を興奮させることで、覚醒状態を保ち、注意や認知、情動のコントロールが可能となる。

●脳幹網様体賦活系と神経伝達物質●
脳幹網様体賦活系の作用は、神経伝達物質によってコントロールされている。この神経伝達物質は、モノアミンノルアドレナリンセロトニンなど)やアセチルコリンなどがある。


モノアミン作動系は、主に覚醒状態の維持や覚醒の開始に関連していると言われている。アセチルコリン作動系は覚醒レベルの上昇に関わり、主に新しい刺激に対して一時的に脳の興奮性を上昇させる作用があると言われている。

●姿勢筋緊張と脳幹網様体賦活系●
脳幹は覚醒のコントロールだけではなく、自律神経や姿勢筋緊張のコントロール、摂食などにも関わっている。
特にモノアミン作動系は姿勢筋緊張のコントロールに関わっており姿勢筋緊張の向上を図るような抗重力位をとることでこれらを刺激し、神経伝達物質の放出を促すことで、覚醒の向上を図ることが可能となる。

以上、覚醒と姿勢コントロールの関わりについてのまとめを行った。

覚醒を促すためには脳幹網様体を機能させることが重要で、我々理学療法士は、姿勢変化を通じて脳幹網様体の機能活性化に関わることが可能である。覚醒を促すためにも早期より理学療法士の核である基本動作に積極的に関わっていくことが重要であると思う。


続きはまた次回。

書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法

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