2015年4月29日水曜日

新人研修(理学療法評価~姿勢アライメント~)

前回に引き続き、新人研修の資料についてまとめていきたいと思う。

前回はトップダウン評価とボトムアップ評価についてのまとめを行い、評価の際に必要な要素を示した。
トップダウン評価とボトムアップ評価についてはこちら

今回は、姿勢アライメントの評価についてまとめていく。

姿勢アライメントの評価をしていく際は、各ランドマークをもとに評価を進めていく。
各姿勢におけるランドマークを以下に示していく。






以上のランドマークをもとに姿勢を評価していくが、前回示したように環境と交流を持っている部分を先に評価していくとその他の代償的な姿勢戦略を把握しやすい。

今回はここまで。
実際の研修は実技にて実施したので、今回のまとめは配布した資料の添付になってしまったような・・・。

姿勢アライメントの評価に際に参考にしてみて下さい。


今回参考にさせて頂いた資料


脳卒中片麻痺患者に対する理学療法

2015年4月24日金曜日

新人研修(理学療法評価~ボトムアップとトップダウン~)

ボバースコンセプトについては小休憩・・・・。

当院も4月より新入職員が入職した。

元気のいい新卒のスタッフである。

その新入職員を対象に4月5月と講義を行う予定なので、その内容についてまとめていきたい。


●ボトムアップ評価とトップダウン評価●
理学療法評価には大きく分けて2つの方法がある。1つめは、ボトムアップ評価で、疾患から考えられる評価をすべて行う方法である。この方法は、すべての評価法を行うため、問題点は必ず見つかるが、かなりの時間がかかるため臨床的ではない。しかも見つかった問題点が必ずしも重要なものではない場合がある。もう一つは、トップダウン評価で、問診より得られた困難な動作Demand姿勢・動作分析を行い必要な項目の評価を行っていく方法である。臨床的な評価方法であるが、姿勢・動作分析が中心となるため、姿勢・動作分析が行えないと評価が実施できない。姿勢・動作分析を行うためには、その姿勢や動作の構成要素を適切に把握しておく必要がある。
※全課題と部分課題
姿勢・動作分析は全課題もしくは部分課題にて実施する。全課題は構成要素がすべて入った動作であり、歩行であれば歩行動作のことである。部分課題は構成要素が2つ以上入った動作であり、歩行であれば、立位バランスやステップなどの動作である。

 
 
●姿勢評価のポイント●
私たちが動作を行う場合、中枢神経系からの指令によって筋が動き動作を行うが、それは環境と交流を持つことによって成立する。例えば、床がないところでいくら足を動かしても歩くことはできないし、重力がない空間では姿勢を保つことさえ困難である。また、私たちは環境と交流を持つことによって感覚情報も受け取っている。
 

そのため、姿勢を評価する際、環境と交流を持っている部分を先に評価していくとその他の代償的な姿勢戦略を把握しやすい。
 

立位
立位であれば環境との接地面は足底になるので、足部と下腿の関係性、下腿と大腿の関係性・・・・というように足底より徐々に頭側へ評価していく。
 
坐位
坐位という姿勢でも環境設定によって環境と関わる場所は異なる。
 
高い台に座り、足底が離れた状態であれば、環境との接地面は骨盤になる。そのため、骨盤より徐々に末梢部に向かって評価をしていくとよい。


足底がつく程度の高さの台であれば、環境との接地面は骨盤と足底になり、足底から頭側方向へ評価していく、もしくは、骨盤より末梢部に向かって評価していく2つの方法が考えられる。この場合、環境と接している割合がどちらの方が多いか(浅く座っているもしくは高座位であれば足底より、深く座っているもしくは低い台に座っていれば骨盤より)によって評価を始める場所を変更するとよいと思われる。

さらに、机に手を置いた時に上肢を評価していく際は、中枢部もしくは末梢部どちらからも評価していく事が可能となる。

臥位においては接地面が背面のみであり、おおよそ均等に荷重がかかっているため、どの場所から評価を行ってもよい。


本日はここまで・・・

続きはまた次回。

書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法

2015年4月13日月曜日

ボバースコンセプト(姿勢コントロール~リーチ動作~)

今回はリーチ動作についてのまとめ。
姿勢コントロールのメカニズムについてはこちら

「リーチ(上肢)」と「移動(歩行)」は、動的なバランスコントロールの維持という点で一致している。つまり、どちらも予測的な方法で不安要素に適応している。(Grasso,Zago et al 2000)

特に動作開始時(手を挙げる前 or 足を前に出す前)は同じ戦略にて行われている。
歩行のメカニズムについてはこちら

●リーチ動作の予測的姿勢制御●
リーチ動作(手を前方へあげる)時には、上肢の重さ分、重心がリーチ側前方へ偏位する。効率的に動くためには、動作に先行して姿勢をコントロールする必要があるため、リーチを行う前に重心を高く保ちながら、後方へ重心を移しておく必要がある。この姿勢コントロール時に働くのは、皮質橋網様体脊髄システムであり、リーチ動作も歩行も動作開始前にこのメカニズムによる動作の正しい方向付けが大切である。

●Over head reach●
手を高い位置まで拳上していく時には、①動作開始前②動作開始後(安定性限界内)③運動中(安定性限界の外)で働くメカニズムが異なる。(今回は主に座位でのメカニズムについて説明する。)


動作開始前は、抗重力伸展位を保ちながら後方へ重心を偏位する必要があり、この時には皮質橋網様体脊髄システムが働く。(Feedforward control)
 
上肢の拳上が始まり、両側坐骨が支持面に設置している間は運動肢のコントロールを行うための皮質延髄網様体脊髄システムが働く。(Feedforward control)
 

上肢をより高い位置まで拳上するために、骨盤の拳上側への傾斜が起こると重心の変化が起こる。その変化は背側脊髄小脳路を介して前庭核へ伝えられ、前庭脊髄システムが働き抗重力伸展活動を強める。(Feedback control)

以上、リーチ動作の神経メカニズムについてのまとめを行った。

歩行もリーチ動作も動作を行う前の姿勢コントロールメカニズムは、おおよそ同じメカニズムによって成り立っている。脳卒中片麻痺を呈している患者は、動作を行う前の姿勢コントロールがうまく行えていない者が多い。姿勢コントロールの概念を通して、PTもOTも共通の問題点に向かってアプローチが行えると麻痺やパフォーマンスの改善が効率的に進むと思われる。

書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法


2015年4月7日火曜日

ボバースコンセプト(姿勢コントロール~1歩目の重要性~)

今回は歩行についてまとめていきたいと思う。
姿勢コントロールのメカニズムについてはこちら


歩行開始の1歩目は、歩くために一側下肢をコントロールする動作であり、随意的な運動である。1歩目がスムーズに行われることにより、CPGによる自動的な歩行が可能となるため、歩行の1歩目を効率的に行うことは重要である。

●歩行開始前の姿勢コントロール●
下肢を持ち上げるという動作は前方への外乱が加わる動作である。そのため、その動作に先行して重心を高く保ちながら後方へ重心を移し、姿勢が崩れないようにコントロールする必要がある。
効率的に1歩目を行うために、一側下肢を前方へ出していく際、その動作に先行して支持側となる下肢の後方(踵)へCOP(床反力中心)を変化させることが必要である。

●歩行開始時の神経メカニズム●
歩行開始の1歩目には、①皮質橋網様体脊髄システムによる正しい動作の方向付けを行った中で前庭脊髄システムが働き支持脚の強い抗重力伸展活動が得られること②皮質延髄網様体脊髄システムによる遊脚肢の円滑な姿勢筋緊張コントロールが行われることが必要である。
 
1歩足を前に出す動作に先行して、皮質橋網様体脊髄システムが働き、抗重力伸展位を保ちながら重心を支持脚へ移し、動作の正しい方向付けを行う。(Feedforward control)

 
重心が支持側へ移ったことにより支持側の床反力は大きくなる。その床反力情報は背側脊髄小脳路を介して前庭核へ伝えられ、前庭脊髄システムを働かせ支持脚の抗重力伸展活動を強める。(Feedback control)
皮質橋網様体脊髄システムおよび前庭脊髄システムにより、一側下肢で姿勢をコントロールすることが可能となったら、皮質延髄網様体脊髄システムにより遊脚肢は支持をすることをやめ、空間で円滑に姿勢筋緊張をコントロールできるよう調整する。(Feedforward control)
 
以上、歩行開始(1歩目)の神経メカニズムについてまとめを行った。
 
次回はリーチ動作についてまとめていきたいと思う。
 
書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法
 

2015年4月3日金曜日

ボバースコンセプト(姿勢コントロール~起立・着座~)

前回からの続き・・・。

前回は姿勢コントロールの神経メカニズムについてのまとめを行った。
姿勢コントロールのメカニズムについてはこちら

今回からは実際の動作の中で神経メカニズムを考えていきたいと思う。

今回は起立・着座動作について。。。

起立(Sit to stand)と着座(Stop standing)は似たような動作であるが神経メカニズムは異なる。
 
上下の重心の変化が大きい赤丸で示した部分を考えてみたい。
 
●起立(Sit to stand)●
起立動作は、座位から立位へと姿勢を変化させる動作であり、重心を高く持ち上げていかなければならないため強い伸展活動が必要となる。特に離殿直後は床反力が最も強くなる時期であり、この床反力情報は背側脊髄小脳路を介して前庭核に伝えられ、姿勢筋緊張の促通を図る。
つまり、起立動作は前庭脊髄システムが働く動作であり、Feedbackによる姿勢のコントロールを行う動作である。
 
 
●着座(Stop standing)●
着座動作は、起立動作とは逆で立位から座位へと姿勢を変化させる動作であり、重心を下げていかなければならない。その際はスピードをコントロールするように徐々に重心を下げていかなければならない。立位から徐々に重心を下げていく時の床反力は、直立立位の床反力よりも小さくなる。そのため、起立動作のように前庭脊髄システムによる筋緊張のコントロールが困難な動作である。着座動作は運動肢となる両下肢の姿勢筋緊張を適度に抑制をしながら、重心の変化に随伴してコントロールをする必要がある。
つまり、着座動作は皮質延髄網様体脊髄システムが働く動作であり、Feedforwardによる姿勢のコントロールを行う動作である。
 
 
今回は、起立(Sit to stand)と着座(Stop standing)における神経メカニズムのまとめ
をおこなった。
 
次回は歩行についてまとめていきたいと思う。
 
書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法