2017年2月22日水曜日

最近思うこと…

以前書いたブログ(ボバースアプローチと整形外科的アプローチの比較)で紹介した論文に対するLetter to the editorをもとに、私のブログに対してNegativeに書かれたブログがあった。今回はそこで紹介されていたLetter to the editorを紹介したいと思う。
ちなみに、Letter to the editorとは雑誌で発表された論文に対して、反論などの意見を述べるために出された「意見書」のようなものである。

Letter to the editor
 私はこの学術誌に掲載されている論文の質に感銘を受けている。しかしながら、Wangらの最近の論文に関しては、私の懸念を表現するために意見書を書かなければならない。
 この論文全体を通して、著者は初期評価時と最終評価時の差(利得)を治療評価の指標としている。このこと、特に非線形転帰尺度に由来するデータに利得を利用することは誤りではないかと思う。例えば、MASに利得が利用されている点である。この転帰尺度は、低い点数は非常に簡単なものであり点数を取りやすいが、点数が高くなるにつれて難易度が高くなり、点数が上がりにくい性質がある。これにより、床面効果や天井効果を予防するようにデザインされている。実際、多くのセラピストは、患者が最高点を出すことは難しいコメントしている。論文の中の表2に示される相対的な回復において、MASは整形外科的介入を行った群は23.3から25.5に増加し、ボバース概念に基づいた介入を行った群は、17.9から24.0に増加している。それぞれの利得は、整形外科的介入を行った群は2.0で、ボバース概念に基づいた介入を行った群は6.1であり、ボバース概念に基づいた介入を行った方が3倍近く改善したことを示唆するデータである。しかしながら、2つの理由から誤りを感じる。1つ目は、初期評価時の点数において、ボバース概念に基づいた介入を行った群のMASの点数が非常に低かったことである。2つ目は、最終評価時のMASの点数は整形外科的介入を行った群の方が高かった点である。これと同じことがBBSの分析にも言える。点数の変化量(利得)の比較は、線形尺度でさえ最終評価時の点数の比較よりも統計的に有意差を示しやすく、治療の違いを誇張しやすい。そのため、私はほかの手段でデータを分析するよう指導を受けたことがある。例えば、最終評価時のデータの分散分析を行うなどである。今回、通常示されるこのようなデータが示されていないように思われる。
 この点から今回意見を申し出た。痙縮患者に対するデータに関して、有意差が強く表れているようであるが、私は厳密な分析を行うと統計的に有意な効果を示さなかったのではないかと考える。



参考文献
Mepsted R:The recent article by Wang et al. Efficacy of Bobath versus orthopaedic approach on impairment and function at different motor recovery stages after stroke: a randomized controlled study.Clin Rehabil. 2006 Feb; 20(2): 183.

 最近学会などに参加して思うことは、EBMに基づくリハビリテーション重要性が求められてから、RCTによる研究やシングルケーススタディーにおいてもABAデザインによる研究が増え、治療方法の有効性を示す発表が増えていると思う。このような研究や発表は大変重要であるとは思うが、「症例数が・・・」や「統計学的処理が・・・」、「両群間のベースラインが・・・」など、方法論でその効果についてNegativeに捉えられることも少なくない。ましてや、今回のようにその分野に精通した研究者による査読を受けた論文でさえ、同様の指摘を受けている。私も学会等で発表することがあるが、私のように研究に関する知識が乏しいものが、特定の治療方法に対する効果についての研究や発表を行うことの意味について疑問に思うことがある。最近思うことは、私のように臨床で働いてるものは、患者や方法の選定に難渋する研究を行うよりは、症例1例でもよいので症例報告を大事にすることが重要のように思う。現在は科学的根拠のある治療方法がたくさん報告されているが、その研究において適応外とされているものや、復職などの活動・参加に対するアプローチに関しては方法が確立されていないものもある。そのような患者に直面したときに、現在報告されている方法の中から効果がありそうな方法を探ったり、また、さまざまな方法を組み合わせたりしながら、患者の目標に対してアプローチを行った結果を報告することが臨床家としては大切ではないかと思う。目の前の患者に対してなにができるか?そして、その結果がほかの患者にどう生かせるか?そういった観点からの研究や発表が臨床家としては大切だと思う。


 本日はここまで。


続きはまた次回。。。

書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法

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