2015年6月13日土曜日

脳血管障害に対する装具療法

先日行われた学会で、装具についての発表が多く行われていたので、今回は装具についてまとめたいと思う。
 現在は様々な装具・継手が開発されており、その利用方法も様々である。
 今回は私の装具に対する考えをまとめていく。

●装具の選択●
まずは装具利用に対する私の意見を述べたいと思う。
近年は長下肢装具が再び(?)クローズアップされることが多く、先日の学会でもシンポジウムや研究発表で多く議論されていた。しかし、私は必ずしも長下肢装具を利用しなければならないとは思わない。例えば、ハンドリングが上手であったり、2人で介入できるなど人的な環境設定によって姿勢・運動のコントロールが可能であれば、長下肢装具などの手厚い物的な環境設定は必要ないと思う。

しかし、ハンドリングがうまくなく、人的余裕もない場合や病棟生活などの治療場面以外で機能を高まる場合には装具などの物的な環境設定が必要である。



つまり、必ずしも長下肢装具などの手厚い物的環境設定を行わないといけないわけではなく、患者の能力やセラピストの能力に応じて環境因子を整えながら治療を展開することが大切であると思う。

●治療用装具と機能代償用装具●
装具には治療用装具と機能代償用装具という2つの利用目的がある。
治療用装具は、歩行獲得を目指すための運動学習を促すことを目的とする利用方法で、装具による適切なアライメントの矯正および関節自由度の制約により物的な環境因子を整え、課題の難易度の調整を行うものである。
機能代償用装具は、障害により失った機能を代償することを目的とする利用方法で、患者の生活スタイルに合ったADLを最大限に発揮できるよう調整を行うことが求められる。
装具の選択の部分で述べたことと重なるところはあるが、治療用装具と機能代償用装具では利用目的が異なるため、治療場面と生活場面(病棟生活も含む)では同じ装具を利用しないといけないわけではない。特に治療場面ではどのような神経科学的な背景に基づいて、どのような機能向上を求めているかを考えながら装具を選択する必要があると思われる。

●長下肢装具●
メリット
①膝関節の支持性が低下しているものでも麻痺側へ荷重をかけることが可能。
②モーメントアームが長くなるため、短下肢装具よりも足関節・股関節の動きを引き出すことができる。
足関節の動きに対する股関節・体幹の動きを学習させることができる。
つまり、長下肢装具を利用すると、立脚の難易度を下げることが可能で、立脚時のダイナミックな動きを誘導することができ、足関節股関節・体幹感覚統合を図ることが可能である。
デメリット
①膝関節が固定されるため、立ち上がり動作遊脚時の動作の難易度は高くなる
②動く際の足関節・膝関節・股関節の感覚統合は困難。

●短下肢装具●
メリット
足関節背屈角度の調整により、立脚・遊脚の難易度調整が可能。
  底屈を制動 ⇒ 遊脚容易性が得られる
  背屈を制動 ⇒ 立脚安定性が得られる
②剛性と制動を高めることにより、荷重時立位の安定性を得ることが可能。
③ウェッジなどの調整により側方動揺のコントロール可能。
④継手の種類によっては、足部の機能を補助することも可能。

●姿勢コントロールと装具療法●
脳卒中の治療において姿勢筋緊張のコントロールは重要であり、それはハンドリングなどによる介入も装具による介入も同様である。姿勢コントロールについてはこちら
装具を利用する1番のメリット(特に長下肢装具)は、支持性が低下している状態でも適切なアライメントを保ちながら荷重することができることである。これにより、荷重情報が背側脊髄小脳路を介して前庭核に伝えられ姿勢筋緊張の促通を図る事が可能である。つまり、装具の利用によりFeedbackによる姿勢のコントロールが可能となる。どのような神経メカニズムの学習を図っていくかを考えながら、装具療法を含めた治療方法の選択を行っていく必要があると思う。

本日はここまで。


続きはまた次回。。。
(興味のある方はこちらもどうぞ;脳卒中患者の自立を促すための装具療法

書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法



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