2015年5月14日木曜日

ボバースコンセプト(予測的姿勢制御と身体図式)

今回は予測的姿勢制御についてまとめたいと思う。

●予測的姿勢制御●
予測的姿勢制御は、予測される重心の変化に対して事前に対応する姿勢制御機構である。予測をするためには、事前にどのような動作が起こるか知っておく必要があり、運動のプログラミングが大切となる。

●運動プログラムの生成●
運動プログラムは、補足運動野および運動前野にて生成されるが、これらは後頭頂皮質の身体図式の情報を基に生成される。そのため、効率的な運動をプログラムするためには、適切な身体図式の生成が必要となる。


●身体図式●
身体図式は身体表象を示す用語の1つで、似た用語として身体イメージがある。この2つの用語の境界は必ずしも明確ではないが、身体図式は主に生理学・神経科学領域で、身体イメージは心理学・精神医学領域で用いられる傾向にある。また、身体イメージは身体表象を意識化したもの身体図式は非意識下で潜在的なものと表現されることも多い。
身体図式に関わる領域は上頭頂小葉と下頭頂小葉があり、上頭頂小葉は体性感覚(内的情報)の統合を図り、下頭頂小葉は体性感覚(内的情報)と視覚(外的情報)の統合を図るとされている。




●予測的姿勢制御が働くために●
予測的姿勢制御が働くためには、適切な身体図式の形成が必要である。しかし、私たちの脳は、使用されない領域は他の領域に置き換わったり、分離した感覚情報が入力されないと同じ感覚情報として捉えてしまう。また、大脳半球には相互に抑制するメカニズムが存在し、脳卒中後に非麻痺側ばかりを使ってしまうと損傷された脳に対する抑制が強くなり、情報処理が行いにくくなる。そのため、左右均等に適切な感覚情報を入力し、自己身体のことをきちんと知覚できるように関わる必要がある。
半球間抑制のメカニズムについてはこちら


 
それでは、左右均等に感覚情報を入力するためにはどうしたらよいだろうか?
私たちの脳の運動野、感覚野ともに手はかなり広い領域を占めている。久保田競先生の「手と脳」のなかで、手は外部の脳であると表現されており、手を動かすことで運動野の血流は約30%、感覚野の血流は約17%増加すると言われている。そのため、脳を活性化させ左右の情報を均等に処理するためには手(特に手掌)からの情報が重要である。
 
また、多関節運動学入門の中に書かれているライトタッチの文献では、示指で固定物に1N以下の軽い力で触れるだけで身体の動揺は50~70%低下すると言われており、姿勢コントロールと手掌の関わりの重要さについても示されている。
さらに、立位においては環境との唯一の接点となる足底の情報も重要で、冷却によって足底皮膚受容器の感覚情報を入りにくくした実験では、効率的な姿勢制御に必要な要素の1つである足関節戦略が困難となり、股関節戦略へと移行することを示している。
つまり、予測的姿勢制御が働くためには、適切な身体図式の形成が必要で、適切な身体図式を形成するためには手掌・足底からの情報を適切に入力する必要がある。手と脳の関わりの部分で述べたが、脳の血流は運動を行っているときの方が増加する。そのため、手掌・足底からの感覚情報は、皮膚からの感覚情報だけでなく内在筋の活性化を図り、固有感覚情報を取り込めるようにアプローチすることも重要となる。
手掌・足底への関わりが効率的な予測的姿勢コントロールへ導くためには必要と思われる。
 
本日はここまで。
参考にした書籍はこちら



脳卒中片麻痺患者に対する理学療法

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