2016年3月7日月曜日

ボバースの文献③:ボバースアプローチと整形外科的アプローチの比較

引き続き、ボバースに関する文献の紹介を行いたいと思う。

 リハビリテーションの報告において、多くの研究は治療効果をADLスコアのみで示しており、能力改善に影響を与えるという報告は多くあるが、麻痺などの機能障害に関する改善を示したものは多くない。
 今回紹介する文献は、ボバースコンセプトに基づく介入と整形外科的な視点に基づく介入の効果の違いを機能面と能力面から比較・検討を行ったものである。また、検証する集団を整えるため、回復ステージ別に分けて比較を行っている。

ボバースアプローチと整形外科的アプローチの比較:無作為比較試験

 今回の目的は、整形外科的なアプローチと比較して、脳卒中患者におけるボバースアプローチの効果があるかどうかを調査することである。また、臨床研究の問題点として、対象となる患者集団が不均一であることが提言されているため、回復段階別に比較・検討を行うこととする。

方法
 対象は、下肢のBrunnstrom recovery stage(以下BRS)がⅡ~Ⅴまでの脳卒中片麻痺患者で、コミュニケーションが可能でリハビリに意欲的なものとした。この基準を満たす44名が対象となった。BRSに応じてBRSⅡ~Ⅲを痙縮患者、Ⅳ~Ⅴを回復患者とした。痙縮患者は21名でボバースアプローチ群10名と整形外科的アプローチ群11名に無作為に割り振られた。回復患者は23名でボバースアプローチ群11名と整形外科的アプローチ群12名に無作為に割り振られた。
 評価項目には、機能障害はStroke impairment assessment set(以下SIAS)の下肢運動項目と筋緊張の項目を、能力障害には、運動機能評価スケール(motor assessment scale:以下MAS)とBerg balance scale(以下BBS)、Stroke impact scale(以下SIS)を利用した。評価の測定は介入前と終了時の計2回実施した。
 ボバースコンセプトに基づいた介入は、筋緊張の正常化や姿勢コントロール・正常運動バターンの再学習などバランス反応と運動の質を最適化することを目的に、徒手的な促通や言語・視覚的フィードバックを通じた介入が行われた。治療介入は、成人のボバース講習会を受講した理学療法士2名が実施した。どちらも10年以上の経験があり、少なくとも5年間はボバースコンセプトに基づく介入を行っていた。整形外科的な介入には、他動運動や自動介助運動、自動運動、抵抗運動が含まれ、患者に随意的なコントロールを要求しながら筋力増強訓練を実施した。寝返りや立ち上がり、移乗、歩行などの特異的な活動の反復に焦点を当てた介入も早期から実施し、歩行訓練は、非麻痺側で支持しながら平行棒内から開始された。治療介入は、2名の理学療法士が実施した。どちらも10年以上の経験があり、少なくとも5年間は脳卒中に対するアプローチを行っていた。
 どちらの介入も1回40分を20回実施した。

結果
●痙縮患者●
 基本情報に両群に差を認めなかった。治療介入後、両群共にSIASの下肢運動項目とMAS、BBSの有意な改善を認めた。さらに、ボバースアプローチ群はSIASの筋緊張とSISの有意な改善を示した。2群間の比較では、ボバースアプローチ群が、整形外科的アプローチ群と比較し、筋緊張とMAS、SISにおいて有意な改善を示した。BBSとSIASの下肢運動項目に関しては有意差を認めなかった。
●回復患者●
 基本情報に両群に差を認めなかった。治療介入後、両群共にBBSとSISに有意な改善を認めた。さらに、ボバースアプローチ群はMASの有意な改善を示した。2群間の比較では、ボバースアプローチ群が、整形外科的アプローチ群と比較し、MASとBBS、SISにおいて有意な改善を示した。SIASの下肢運動項目と筋緊張の項目に関しては有意差を認めなかった。

まとめ
 ボバースアプローチおよび整形外科的なアプローチどちらも患者の機能および能力改善を促進した。痙縮患者および回復患者のどちらにおいても整形外科的なアプローチよりもボバースアプローチの方が有効であった。

参考文献
Wang RY, Chen HI, Chen CY, Yang YR:Efficacy of Bobath versus orthopaedic approach on impairment and function at different motor recovery stages after stroke: a randomized controlled study.Clin Rehabil. 2005 Mar;19(2):155-64.

以上、ボバースアプローチと整形外科的なアプローチの比較を行った文献の紹介を行った。BRSによって患者の回復段階の群分けを行うことに関しては、少々違和感を感じる(StageⅡ~Ⅲが痙縮患者という事も含めて)が、回復段階に限らず、筋力増強訓練やその時点の患者の能力に応じた動作練習を中心に行うよりも、神経生理学的な知見に基づき、将来的な姿勢・運動学習を見据えた介入を行う方が脳卒中患者の機能・能力の改善のためには有効であることが示された文献であると思う。

興味のある方はこちらもどうぞ
今回紹介した論文のletter to the editor


本日はここまで。

続きはまた次回。。。


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