運動麻痺回復ステージ理論についてはこちら
●1st stage recoveryの特徴●
・残存している皮質脊髄路の興奮性を向上させる時期
・残存皮質脊髄路の興奮性は急性期から急速に衰退して3か月で消失する。
・この残存皮質脊髄路の興奮性の衰退には、ワーラー変性が関係する。
(不使用の場合は、1週間程度からワーラー変性を認める)
1st stageでは、皮質脊髄路の興奮性を高めることが大切なようだ。脳卒中患者は、一次運動野自体は損傷されていないが、それに関連する経路の損傷にて運動麻痺を生じているものが多い。そのため、不使用を学習させることなく、運動野の活動を高めていくことで、皮質脊髄路の興奮性を高めていくことができると考えられる。
●脳卒中後の半球間抑制●
通常、両側の大脳半球は脳梁を介して相互に抑制し合い、均等に働けるように調整し合っている。脳卒中などにより大脳半球にダメージを受けると、ダメージを受けていない大脳半球からの抑制が強まりダメージを受けた大脳半球の活動性は低下する。さらに、動かない麻痺側を代償するように非麻痺側のみで動こうとすると、ダメージを受けた大脳半球への抑制はより強くなり、ダメージを受けた大脳半球の活動性はさらに低下する。これにより一次運動野の活動性も低下するため、皮質脊髄路の興奮性向上が阻害される。
●半球間抑制のメカニズム●
半球間抑制のメカニズムは以下の図に示す通りであるが、運動による抑制だけではなく、感覚入力によっても半球間抑制は起こるとされている。つまり、脳卒中片麻痺となり、随意運動が困難な状態であっても感覚刺激を入れることで、ダメージを受けた大脳半球の活動性を高めることが可能である。特に一次感覚野と一次運動野の連絡は密であるため、適切な感覚刺激を入れることで一次運動野の活動を高めていくことができると予測できる。
●一次運動野の機能的差異●
一次運動野は、前方に位置する吻側部と後方の尾側部では機能が異なる。吻側部は、周期的な動きに関与し、肩・肘関節などの中枢部の動きに関わる。一方、尾側部は、高度にスキル化された運動に関与し、主に手指などの末梢部の動きに関わる。前者の運動野はOld M1、後者の運動野はNew M1と呼ばれている。
Old M1は、筋・関節の固有感覚入力を受け取りその情報に基づいて動きをコントロールが、New M1は、皮膚触覚の感覚入力を基に動きをコントロールしている。そのため、肩・肘関節(股・膝関節)などの中枢部に関わる運動野の興奮性を高めるためには、肩や肘関節等を積極的に動かし、固有感覚を入力する必要があり、手指(足部)などの末梢部に関わる運動野の興奮性を高めるためには、皮膚触覚の情報をたくさん取り入れる必要があると考えられる。
今回は、1st stageの運動麻痺回復へ向けた関わりについてまとめてみた。
運動麻痺回復へ向けて、急性期では随意運動を認めなくても、適切な感覚入力を行い運動野の興奮性を高めていく事が大切である。この時期に必要なアプローチ方法は、運動イメージなどを行い運動のプログラミングを行うものや、イメージと感覚の統合を図り運動学習を進めていく方法よりは、体性感覚入力を行い細胞の活性化を図るアプローチを選択することであろう。急性期は、その後の機能回復に関わる重要な時期と考えられるため、適切な治療を選択していく事が我々セラピストに求められることであると思う。
今回はここまで・・・。
次回は2nd stageについてまとめていきたいと思う。
書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法
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