運動麻痺回復ステージ理論についてはこちら
今回は、2nd stage recoveryについて。
●2nd stage recoveryの特徴●
・皮質間の新しいネットワークの興奮性に依存する。
・3か月間をピークにこのメカニズムの再構築が起こる。
・皮質間の抑制が解除(脱抑制)されることによって、代わりの皮質ネットワークの再組織化が構築され、残存皮質脊髄路の機能効率を最大限に引き出すよう機能する。
・この脱抑制メカニズムは6か月までに消失する
つまり、2nd stageでは、新しいネットワーク構築へ向けて、運動イメージを行い新たな運動プログラムネットワークの構築を図ったり、イメージと感覚情報の統合を行いプログラムネットワークの修正を行うようなアプローチを選択する必要があるということであろう。
イメージと感覚情報の統合を図り、よりよい運動プログラムネットワークへ修正していくためには、運動学習の要素も知っておく必要があるため、運動学習についても簡単にまとめる。●運動学習●
運動スキル獲得の3段階
①認知段階:課題の性質を認知し、何をどうすればよいかを考える段階
②連合段階:様々な方法を試し、比較照合することでより効率的な動きへ
③自動化段階:学習が完成し、潜在的な意識によって運動調整を行う
運動学習は、3つの種類に分類される。それは、教師なし学習、教師あり学習、強化学習である。
教師なし学習は大脳皮質が、教師あり学習は小脳が、強化学習は基底核が主に関与する。
教師なし学習
・あらかじめ出力すべき明確な学習基準がないものであり、課題を繰り返すことで記憶が作られ、その記憶と実際の結果を結合していく相関学習のプロセスのこと
・ワーキングメモリーやミラーニューロンなどが関与する
教師あり学習
・比較照合する基準があり、意図した運動と実際にした運動結果の誤差により学習していく過程。
・適応学習に関与する。
※適応学習:環境に依存した感覚情報に基づいて学習するものでオープンスキルの運動に相当する。
強化学習
・人間と環境の相互作用から報酬を得て、報酬を最大化するように自己の選択可能な行動の価値を学習するもの。
・正の強化が行われるためにはドーパミン作動系が働く。
・ドーパミン神経細胞は「行動を起こす時に得られる期待される報酬量」と「行動をとった結果、実際に得られた報酬の量」の誤差(予測誤差)に応じて興奮し、シナプス伝達効率を向上させる。
・連続的学習に関与する。
※連続的学習:連続的な学習の中から順序の知識を獲得するもので、クローズドスキルの運動に相当する。
また、運動学習を効率的に進めていくためには、課題の難易度調整が重要であり、60~70点くらいの少し難しい程度に課題の難易度を調整する必要がある。
以上、2nd stage recoveryに必要な要素と運動学習についてまとめてみた。
2nd stegeの患者さん(おおよそ回復期の患者さんと思われる)には、新たなネットワークを構築してもらうために、課題や環境とどのように関わっていけばよいか自分で考えるよう促したり、課題指向型のアプローチを積極的に行う必要があると思われる。
新たなネットワークが構築できるよう、セラピストは課題設定やフィードバック情報の与え方などを考慮することが必要だと思う。どの場所で、どのようなことをしてもらって、どのように声掛けをしていくかを選択できる能力を身につけることが大切だろう。
次回は3rd stageについてまとめていきたい。
書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法
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