2015年8月29日土曜日

理学療法評価と課題設定(Whole task , Part task , Component)


私たちの評価は、ボトムアップ評価とトップダウン評価に分けられるが、臨床的に多く行われる評価はトップダウン評価である。詳しくはこちら

トップダウン評価を行う際は、動作観察・分析が重要であり、その動作課題の理解は重要である。

今回は動作課題(task)についてまとめたいと思う。

動作課題にはwhole task(全課題)part task(部分課題)がある。私たちが動作分析・課題を行う際、whole taskとpart taskの把握は重要である。
例えば、whole taskがトイレ動作だとする。そのpart taskが移乗動作であり、移乗動作に問題があるとする。これだけの把握では、移乗動作に問題があるという事が分かるだけで、主要な問題点、機能障害の把握はできない。そのため、主要な問題点、機能障害を把握するためにはcomponent(構成要素)を理解する必要がある。
 
歩行のcomponentを考えてみる。
歩行(足を一歩前に出す)を行うためには、立脚側の足関節外反・股関節内転に伴い骨盤が立脚側へ偏位し、重心が立脚側足底へ移動する。体幹・頸部は立ち直りが起こり伸展位をキープする。また、立脚側足関節背屈曲・股関節内旋により、重心は前方へ移動。これにより、遊脚側骨盤の前方回旋が起こり、遊脚が可能となる。遊脚時、clearanceを確保するために骨盤は水平位に保持する。このように1歩出すためには、多くの関節アライメントの変化が起こり、それを可能にするためには様々な筋群の活動が必要となる。
また、神経メカニズムでは、まず①皮質橋網様体脊髄システムが働き、抗重力伸展位を保ちながら重心を支持脚へ移し、動作の正しい方向付けを行う。②重心の変化は、前庭脊髄システムを働かせ支持脚の抗重力伸展活動を強める。③皮質橋網様体脊髄システムおよび前庭脊髄システムにより、一側下肢で姿勢をコントロールすることが可能となったら、皮質延髄網様体脊髄システムにより遊脚肢は支持をすることをやめ、空間で円滑に姿勢筋緊張をコントロールできるよう調整することにより1歩前に出すことが可能となる。詳しくはこちら
このように1つの課題を行うためには、多くのcomponentが必要である。



 

 

そのため、part taskとはwhole taskの一部を抜き出した動作ではなく、whole taskを行うために必要なcomponentを2つ以上含んだ課題と理解すべきである。

例えば、座位でのバランス能力を見ると歩行に必要な体幹の機能を評価することも可能であるし、起立や着座動作では、Feedback系やFeedforward系の評価が可能である。

詳しくはこちら
 
part taskをいくつか組わせて評価・分析を行うことで、主要な問題点を把握することができ、どういう姿勢・課題でどこから治療を行えばよいか把握するという、クリニカルリーズニングを行うことができる。
 
本日はここまで。
続きはまた次回。。。
 
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2015年8月10日月曜日

姿勢制御と単関節筋

今回は、姿勢制御における単関節筋についてまとめたいと思う。

ヒトの身体には単関節筋と二関節筋が存在する。
単関節筋と二関節筋の働きは異なり、単関節筋は重力対応のために生まれた筋であり、二関節筋は制御担当のために生まれた筋であると言われている。
実際、長期臥床患者では二関節筋よりも単関節筋の萎縮が激しく、二関節筋を主体とした関節運動を呈している場合が多いと言われている。

また、姿勢制御、特にクラシックバレエなどのより高いレベルの姿勢制御を必要とする場合には、選択的な運動が必要となるが、選択的な運動には単関節筋によるコントロールが必要である。
たとえば、二関節筋によるコントロールでは、股関節屈曲や外転時に骨盤の後傾や拳上が生じてしまい、バレエを踊ることは困難となる。つまり、二関節筋によるコントロールでは、骨盤と下肢および体幹の選択的な運動は困難で姿勢制御を行うためには不向きであり、単関節筋による選択的なコントロールが必要となる。

さらに、疼痛を有する患者の多くは、単関節筋と二関節筋のバランスが不均衡で、二関節筋を多用する傾向にあると言われている。二関節筋によるコントロールでは、運動の中心が各関節に位置せず、関節に負担をかけてしまい疼痛を有する場合が多い。そのため、疼痛や不安定性の改善には単関節筋やローカルマッスルなどの細かなコントロールができる筋のトレーニングを行うことを提唱しているものが多く存在する。

つまり、単関節筋重力環境下における姿勢制御のために存在しており、適切にコントロールしていくためには単関節筋への評価・介入が必要となる。

以上、姿勢制御と単関節筋についてのまとめを行った。
様々な動作時の単関節筋の役割についてのスライドを下記に示しておくので、興味のある方はご参照ください。




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