2016年7月4日月曜日

海外の文献②(被殻出血による片麻痺患者の錐体路と皮質網様体路の損傷の特徴)


引き続き、皮質網様体路に関する文献を紹介したいと思う。
 今回の研究は、拡散テンソル画像を用いて被殻出血による片麻痺患者の錐体路と皮質網様体路の損傷の特徴を調査したものである。


被殻出血による片麻痺患者の錐体路と皮質網様体路の損傷の特徴

 被殻出血は脳出血の中でも発生頻度が高い。被殻の周辺には錐体路や皮質網様体路などの運動に関わる神経路が走行している。錐体路は、主に四肢の遠位部の制御を行い、皮質網様体路と網様体脊髄路からなる皮質網様体脊髄路は、四肢遠位部、特に手の微細な運動を行う際の中枢部と四肢近位筋の制御を行っていると言われている。そのため、錐体路と皮質網様体路の解明は、脳卒中患者の運動障害の解明にとって重要である。今回、拡散テンソル画像を用いて被殻出血による片麻痺患者の錐体路と皮質網様体路の損傷の特徴を明らかにすることを目的とした調査を行った。
方法
 対象は、大学病院にリハビリテーション目的で入院している患者57名(男37名、女20名、平均年齢55.1歳、右出血31名、左出血26名)とした。対象の基準は①初発の脳卒中であること②年齢が20~75歳であること③拡散テンソル画像を脳出血後8~30日の間で撮影していること④自然発生的な被殻出血であること⑤出血層と反対側の運動障害を呈していること⑥既往に神経学的あるいは精神医学的な問題のないものとした。臨床の評価項目は、Motricity Index(以下、MI;MMTを基本とした運動機能評価法)とmodified Brunnstrom Classification(以下、MBC;手の評価)、機能的歩行カテゴリー(FAC)を利用した。評価は拡散テンソル画像を撮影した時期と同時期に行った。
 各神経線維を同定するため、錘体路の起点ROIは、橋中部前方に配置し、ターゲットROIは橋下部前方に配置した。皮質網様体路の起点ROIは、網様体に配置し、ターゲットROIは中脳被蓋に配置した。神経線維の損傷の程度によって、タイプⅠ(損傷を認めない)とタイプⅡ(軽度あるいは部分的な損傷)、タイプⅢ(重篤または完全損傷)の3つに分類した。また、錘体路と皮質網様体路の損傷の有無によって患者を4グループに分類した。
Aグループ:錘体路と皮質網様体路どちらも正常なもの
Bグループ:錘体路のみ損傷しているもの
Cグループ:皮質網様体路のみ損傷しているもの
Dグループ:錘体路と皮質網様体路のどちらも損傷しているもの

図1:各グループの錘体路と皮質網様体路の拡散テンソル画像
(黄:損傷側の錘体路 オレンジ:損傷側の皮質網様体路 コントロール:健常成人の画像)


結果
 57名の対象者の内、Aグループは3名(5.3%)でBグループは4名(7.0%)、Cグループは13名(22.8%)、Dグループは37名(64.9%)であった。MIとMBC、FACはAとB、Cグループと比較しDグループは有意に低値を示した。また、MIはBとCグループと比較しAグループが有意に高値を示した。MBCとFACは、AとB、Cグループの3群間に有意な差を認めなかった。しかしながら、MIやMBCはAグループ → Cグループ → Bグループ → Dグループの順でよい結果を示し、FACはAグループ → Bグループ → Cグループ → Dグループの順でよい結果を示した。平均年齢や出血量は4群間に有意な差を認めなかった。加えて、出血量とMIやMBC、FACとの間に相関を認めなかった。
 神経線維の損傷については、錘体路の損傷は41名(71.9%)、皮質網様体路は50名(87.8%)で認められた。損傷のタイプは、タイプⅡを有する対象の比率は、錘体路と皮質網様体路で同様(17.6%)であった。タイプⅢを有する対象の比率は、錘体路が54.3%、皮質網様体路が70.4%で皮質網様体路が高値を示した。


まとめ
 今回、拡散テンソル画像を用いて被殻出血を有する57名の片麻痺患者の錘体路と皮質網様体路の損傷の特徴を調査した。今回の結果では、皮質網様体路の損傷の発生率の方が錘体路の損傷の発生率より高値を示しており、被殻出血を有する患者は、錘体路よりも皮質網様体路の損傷の方が発生しやすい傾向にあることが示された。また、MIやMBCはAグループ → Cグループ → Bグループ → Dグループの順でよい結果を示し、FACはAグループ → Bグループ → Cグループ → Dグループの順でよい結果を示しており、錘体路は主に随意運動に関わる機能が障害され、皮質網様体路の損傷では主に歩行の障害を呈することが示された。さらに、出血量とMIやMBC、FACとの相関が認められなかったことから、出血のサイズは神経路の損傷にとって重要でなく、出血の位置が重要であると思われた。今回は、リハビリテーションを目的に入院している被殻出血患者のみの調査であるため、すべての被殻出血患者の検討が行えたわけではない。今後さらなる調査が必要である。

参考文献
Yoo JS, Choi BY, Chang CH, Jung YJ, Kim SH, Jang SH.:Characteristics of injury of the corticospinal tract and corticoreticular pathway in hemiparetic patients with putaminal hemorrhage.BMC Neurology 2014, 14;121

 以上、被殻出血による錘体路と皮質網様体路の損傷の特徴について調査した文献の紹介を行った。今回の結果からも外側運動制御系である錘体路は主に随意収縮を、内側運動制御系である皮質網様体路は姿勢筋緊張に関わり歩行獲得の有無に影響を与えることが示唆された。今回の結果で興味深かったのは、片麻痺を呈しリハ目的で病院に入院している患者の中でも、神経の損傷を呈していない者が数名(5.3%)いたということである。これは、画像評価の精度にも問題があったのかもしれない。しかしながら、脳卒中=片麻痺と障害像を定義するのではなく、入院早期より障害されるであろう機能を適切に評価を行い、各症例に適したアプローチを行うことが我々療法士にとって重要であると思われた。



本日はここまで。

続きはまた次回。。。

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