2016年6月15日水曜日

海外の文献①(ヒトの皮質網様体路~拡散テンソル画像による検査~)

 今回は、皮質網様体路に関する文献を紹介したいと思う。皮質網様体路に関する報告は、ネコなどの四足動物のものが多く、ヒトの皮質網様体路の同定は困難であった。しかし、近年の画像診断技術の発展により、拡散テンソル画像などを利用し、皮質下レベルの神経路の明視化と局在化が可能となった。今回の研究は、拡散テンソル画像を用いてヒトの皮質網様体路の同定を行ったものである。


ヒトの皮質網様体路~拡散テンソル画像による検査~

 皮質網様体脊髄路は錐体外路の1つである。これらは体幹と四肢近位筋に分布しており、姿勢コントロールと移動に関係していると言われている。皮質網様体脊髄路は、皮質網様体路と網様体脊髄路からなる。皮質網様体路は6野から生じることが知られており、動物実験では皮質網様体路の解剖と機能についての報告があるが、ヒトでは解剖学的な同定は行われていない。今回、ヒトの皮質脊髄路の同定を行うことを目的とした調査を行った。
方法
 対象は、神経疾患の既往のない右利きの成人24名(男性13名、女性11名、平均年齢32.75±9.65歳)とした。神経路の同定は拡散テンソル画像を用いた。皮質網様体路を同定するために、起点ROI(関心領域)を延髄網様体に配置した。ターゲットROIは、第1ターゲットROIを中脳被蓋に、第2ターゲットROIを6野に配置した。また、比較対象として皮質脊髄路の同定も行った。皮質脊髄路の起点ROIは錐体に配置し、ターゲットROIは運動野(4野)に配置した。
結果
 結果を下記図に示す。青色の線維が皮質網様体路で、オレンジ色(と赤)の線維が皮質脊髄路である。皮質網様体路は皮質脊髄路の前方を走行し、放線冠と内包後脚を下降した。そして、中脳や橋では被蓋を通り、橋・延髄網様体で終了した。半球間で線維量に違いは認められなかった。



まとめ
 拡散テンソル画像を用いることにより皮質網様体路の解剖学的な同定を行うことができた。しかし、今回の調査ですべての線維が同定できたわけではない。今後、臨床研究も含めた調査を行う必要があり、今回の調査で得られた経路の信頼性と有効性を示す必要がある。

参考文献
Yeo SS, Chang MC, Kwon YH, Jung YJ, Jang SH.: Corticoreticular pathway in the human brain: diffusion tensor tractography study.Neurosci Lett. 2012 Feb 2;508(1):9-12.

 以上、ヒトの皮質網様体脊髄路の解剖学的な同定に関する論文を紹介した。今回示された皮質網様体路は、以前、新人研修の中で引用した教科書に載っていたものとはやや異なるものであった。新人研修(画像から見る運動障害~内側運動制御系~)
 これは、今回の論文内に書かれているように、ヒトの皮質網様体路の同定は、以前までは困難なものであり、正確に把握できていなかったことが考えられる。また、今回の研究の限界で指摘されているように、今回の研究が皮質網様体路のすべての経路を網羅できていないことが影響しているのかもしれない。

今後もさまざまな論文を読みながら知識を深めていきたいと思う。



本日はここまで。

続きはまた次回。。。

書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法

2016年6月9日木曜日

雑誌「理学療法学」への掲載決定(Stroke Care Unit における理学療法実施回数の増加がFIM の改善に与える影響について)

書いていた論文の雑誌「理学療法学」への掲載が決定した。どうやら 8月発行予定の43巻 4号に掲載してくれるらしい。どんなものであれ自分で書いた文章が雑誌に掲載されるというのはうれしいものですね。


 今回書いた論文は、去年の日本理学療法学術大会で発表したもので、SCUの担当理学療法士の増員と理学療法の実施回数の増加がFIMに影響を与えるかどうかについて調査したのものである。
 この研究を行おうと思った経緯を説明すると、当院はSCUを21床有し、年間1100~1200例の脳卒中患者の受け入れを行っている急性期病院である。SCUでのリハ内容を充実させるため、理学療法士の増員を図り、SCU内の理学療法が2回実施できる体制をとった。体制が整い軌道に乗ったくらいの時期に、AVERTの急性期リハに対する調査結果を示した論文が発表された。内容は、早期から高密度・高頻度の介入は、mRS0-2(全く症候がない~軽度の障害)という良好な結果に含まれる割合を減少させたというネガティブなものであった。( The AVERT Trial Collaboration groupEfficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT): a randomised controlled trialLancet201538646-55
 リハ量を増加させると悪くなるとは、全く思っておらず、せっかく理学療法士の増員を図り、多くのリハを提供したのに悪くなっていては元も子もない。当院の結果はどのようなものであったか、良い結果が出ることを願いながら今回の調査を行った。結果としては、理学療法士の増員を図り実施回数を増加させることで実施単位数の増加が図れた。また、FIM利得は増員前と比較し増員後の方が優位に改善していた。これにより、発症1.3±1.5日より開始された理学療法2.9単位、作業療法2.1単位の計5.0単位の実施量、そして理学療法2回、作業療法1回の計3回の頻度の実施量と実施頻度によってADLが改善することが示され、ホッとした。


内容に興味があれば、次回の雑誌「理学療法学」を読んでみて下さい。
J-Stageで早期公開も行われているようなので、こちらもどうぞ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/advpub/0/advpub_11115/_pdf



本日はここまで。
 
  
続きはまた次回。。。
 
書籍の紹介