2015年2月28日土曜日

ニューロリハビリテーション(神経可塑性のメカニズム)その⑤

前回からの続き。

今回も運動麻痺回復ステージ理論に応じたアプローチ方法についてまとめていく。

運動麻痺回復ステージ理論についてはこちら

今回は、3rd stage recoveryについて。

●3rd stage recoveryの特徴●
・リハビリテーションによって引き起こされたシナプス伝達の効率化
・2nd stageで再構築された代替ネットワークのシナプスが強化される段階
・運動出力ネットワークを効率的に使用できるようにする。

つまり、1st stageおよび2nd stageにて作り上げてきた運動プログラムネットワークを反復して利用し、強化していく事が大切となる。そのために、患者自身の自主性を高め、日常的に利用してくことが大事である。
そのための手段としてTransfer Packageという手法があるため紹介する。

●Transfer Pakage●
・CI療法と共に利用される手法の1つ
・セラピストが集中的な訓練や日常生活動作における麻痺側上肢の使用を通じて、麻痺側上肢現状や問題を対象者に理解させ、それらの問題を解決するための技法を指導する方策のこと。
・これらの手続きにより、対象者の日常生活動作における麻痺側上肢の使用頻度や動作の質の改善といった麻痺側上肢の行動変容を目的としている。

Transfer Pakageは①麻痺手を使う約束②麻痺手に対するセルフモニタリングの促進③問題解決技法の3つで構成されている。

●麻痺手を使う約束●
・訓練の最初に麻痺手を使う契約を行う
⇒訓練を通してどうして麻痺手を使うことが必要か説明してもらう。
⇒訓練目標を記載してうえで、訓練中に手を使うことに対して自筆でサインをさせ、訓練の契約を結ぶ
⇒実生活で麻痺側上肢で行う動作を10項目決める。

●麻痺手に対するセルフモニタリング●
・対象者に麻痺手の使用状況を把握させる。
⇒取り決めをした10項目の動作ができているか、対象者に毎日日記を書いてもらう。
⇒セラピストが日にの課題内容や動作の質的変化を記録し、対象者にフィードバックする。

●問題解決技法●
・Transfer Packageの中で最も療法士の技量が必要な項目。
・行動をとるための努力(Cost)が、行動の結果得ることができる利益(Benefit)よりも小さい時
 ヒトは麻痺手を生活の中で利用する
⇒セラピストは、麻痺手の現状や患者の心理状態、住環境を把握したうえで、自助具の導入や生活環境の変更、行動様式の変更によって、麻痺手を実生活にて使用させるよう工夫する必要がある

最終的には、麻痺側を日常的に利用していくことが回復には必要となる。回復に対して依存的になるのではなく、自主訓練の指導や動きやすい環境設定を行いながら、自主性を高めていけるよう管理していく事が大事であろう。
 

書籍の紹介
脳卒中片麻痺患者に対する理学療法

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